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厳重拘禁囚 鮎川壬姫6 緊縛解除 就寝準備編



わたしが縄を解かれたのは検査房に戻されてからだった。
幾本もの縄跡が走る。素肌に仄赤い文様が刻み込まれているかのようだ。
見た目にはかなり痛々しい。というか実際に痛い。
後ろ手に縛り上げられていた両腕には、まだ微かに痺れが残っている。
だけど、早瀬さんは緊縛の心得にかなりの自信があるらしく、
血流を止めたり、神経に差し障るような危険な縛り方はしていないそうだ。
長時間、なんとか耐えることのできる程度の苦しみを感じさせる縛り方。
つまり厳密には拘束のためだけではなく、そのものが責め苦となる懲罰的な緊縛、ということらしい。

わたしはゆっくりと縄を解かれながら、早瀬さんからそんな説明を受けた。
最後に残されていた股縄が、そっと外される。
食い込んだ部分の、まだ乾ききらない粘液が糸状に縄にからみついていた。

「…どう?少しは楽になったでしょう。発声を許可するから、答えて」
わたしが、与えられた水を飲み干すのを確認すると、早瀬さんが問いかけてきた。
確かに全ての縄を解かれた直後こそ、多少の気分の悪さを感じた。
それが「縄酔い」というものらしいが、酒に酔った経験がないのでよくわからない。
幸い、既に体調は回復してきている。

「はい…もう大丈夫だと…思います」
わたしは口元を拭い、身体をさすりながら答えた。
「良かった。じゃぁそこに座りなさい」
わたしは監房のベッドに腰を下ろすことが許された。
ゴムシートの冷たさに、思わず目を瞑る。
「手、後ろに回して。手錠かけます」

床に繋がれている足枷も嵌められ、わたしは仮拘束された。
「悪いけど、規則だから。そのまま少し待っていなさい」

そう言うと早瀬さんは、先ほどまでわたしの全身を縛めていた禍々しい黒縄を手際よく
再びきちんと束ねていく。
その一連の作業には無駄が全く感じられない。
若く見えるけれど、この人も相当のプロだ。
わたしはそんなことを思いながら、彼女の様子を見つめていた。
あの縄はわたし専用の戒具とも告げられた。
つまり、今後もあの縄は幾度となくわたしを苦しめることになるのだろう。
無意識に深い溜息を吐く。

「A01番」
早瀬さんがわたしに背を向けたまま、つぶやくように呼びかけてきた。
「は、はい…」
何かまずかったかと思い、咄嗟に姿勢を正し返事をする。
「…ちょっと大変だったね。さすがに、あれはあなたがかわいそう」
意外な言葉だった。
だけど、一人の人間として語りかけられることが、少し嬉しい。
早瀬さんは、揃えた黒縄を壁のフックに掛け終えると、わたしの隣に腰を下ろした。
後ろ手錠のままのわたしの肩に、そっと手がのせられる。


「観月さんはとても厳しい人。それはあなた達にだけではなくて、私達にも」
何となくわかる気がする。
あの上司のもとで働く彼女も、いろいろと大変なのだろう。
「でも、やっぱりここでの規律を保つためには、観月さんのような人は必要だと思う。
 今回、あなたはかなり痛い目にあったようだけれど」

「…とても、怖かったです。それに、わたし…」
短く、正直に思いを述べる。
あのあとの説明は、本当に何も覚えていなかった。
立っているのがやっとの状態。
きっと重要なことも伝えられたのだろう。
聞き逃したことで、今後また新たな罰を与えられるのではないかという恐怖もある。


「大丈夫、確かに厳格だけれど、根に持つようなくだらないことはしない人だから」
不安の色を感じ取ったのか、早瀬さんはわたしの頭を撫でながら慰めてくれる。
「それに先ほどの話は、これに全部書いてある。よく読んでおけば大丈夫」

ベッド上に置かれた黒表紙の本。
「厳重拘禁囚心得」と書かれた小冊子だ。
早瀬さんは続けた。
「あなたは他の子をかばってあげたじゃない。もちろんあの態度はここの規律に反するし、
そのことで今回のような見せしめに繋がった。だけど、あのあと観月さんが褒めてたよ。
なかなかできることじゃない、って」
でもこれは内緒、と人差し指を口に当てて少し微笑んだ。

「……。」
今の話だけでは判断が難しい。
しかし、最悪の事態というわけではないようだ。
もちろんわたしの「身分」は最悪以外の何ものでもないし、それに変わりはないけれど、
早瀬さんの話によって、だいぶ心が救われたような気がする。
緊縛の腕も優れているけれど、精神的なケア技術にも長けている。
長期間の厳重拘禁という、深刻な絶望状況に堕された私たち少女囚。
その辛苦に満ちた日々を、可能な限り平常な精神で過ごさせることも、
彼女たち、ここの刑務官の仕事なのだろう。

だけど、それがたとえ仕事上の言葉とはいえ…。本当に心が安らぎを覚えるのは事実だ。

「ありがとう…ございます…。とても気が楽になりました。嬉しいです」
早瀬さんは無言のまま、私の髪の毛を梳かし続けてくれた。

「A01番、…名前は『鮎川壬姫』さんで間違いない?」
久しぶりに呼ばれた自分の名前。
すっかり番号での称呼に慣らされていて、むしろこの方が違和感を感じる。
わたしは多少のとまどいを覚えながらも、ゆっくりと頷いた。
「覚えておく。観月さんじゃないけれど、わたしもあなたが気に入ったわ。
…もちろん、だからといって特別扱いはしない。
あくまで私はは刑務官、あなたは囚人だということは、わきまえておきなさい」
そう言うと早瀬さんは私を立たせた。これから囚人服へと着替えさせるという。

あの厳しい言い回しは、早瀬さんの立場上仕方のないことだと思う。
けれども、ここでの不安に満ちた生活の中で、ほんの微かではあるけれど…
心のよりどころを得られたような気がした。

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